ビール、日本酒、焼酎、ウイスキーがよく飲まれている日本で、ワインの消費量が徐々に増加している。2019年の一人当たりのワイン消費量は約4本で、これは2009年の1.5倍に相当する。
現在、日本ではワインの生産量(40%)よりも輸入量(60%)の方が多くなっている。国税庁によると、国内ワイナリーの約97%は中小企業である。
高齢化社会の到来
ワインの消費量が増え続け、その需要に応えるためには生産量を増やす必要があるが、日本では急速に高齢化が進んでいることが最大の問題となっている。
「日本の農家は家族経営が多く、後継者を見つけるのが難しくなっています」と語るのは、キリンホールディングス傘下のメルシャン株式会社でマーケティンググループマネージャーを務めるAya Jindoさん。
メルシャン株式会社は、人気の高いChâteau Mercianをはじめとする国産ワインの製造・販売に加え、Frontera、Casillero del Diabloなど海外の提携ワイナリーのワインを輸入している。
「農業法人と協力して、企業管理のブドウ畑を拡大するとともに、高齢者の雇用や農業への就職支援など、ブドウ畑での仕事を増やしています。」
北海道に拠点を置くワイナリー 北海道ワインは、高齢化する農家やワイナリーのスタッフへの負担を軽減するために、スマートアグリを採用している。
同社の従業員はわずか81名。
現在、北海道大学と共同で、ワイナリーでの農薬散布や雑草駆除のための無人ロボットを試験的に導入しており、5年後にはこのロボットを商品化する予定。
地球温暖化
国税庁は、北海道、山梨、長野、山形、大阪をワイン生産地として指定している。
北海道ワインのマーケティングディレクターであるNaoyuki Kishi氏は、「北海道のブドウ産地は夜が涼しいため、糖度の高いブドウが育ち、同時に保管温度が低いため、ブドウ本来の風味を生かしたワインを作ることができます」と語る。
しかし、国内のワイン市場では、収穫量や品質に影響を及ぼす地球温暖化の問題に直面している。
メルシャンにとっては、「この10年間、気温上昇のために収穫時期を数日早めなければなりませんでした。しかし、これは最大の問題ではありません。ブドウの糖度が上がるので、品種によっては熟すのが早くなります。将来的には、日本のブドウ畑の中には、現在の地域が高温になると、畑を冷涼な気候の場所に移さなければならない時期が来るかもしれません」とJindoさんは語る。
売上を維持
Château Mercianブランドは、10月に 前年比成長率98%を達成した。1月から10月までの累計では、前年同期比102%となった。
同社は、特に若年層への販路拡大に取り組んでいる。
近年、ワインの中でもスパークリング、オーガニック、ノンアルコールのカテゴリーが人気を集めているとJindoさん。「オーガニックカテゴリーは、エシカル消費への関心の高まりから、特に若い人たちに受け入れられています。」
北海道ワインの場合、過去5年間の売上は年間22億円と比較的停滞している。
同社は、国内市場向けのワインに加え、中国への輸出も行っており、売上は順調に伸びているという。
Kishi氏は、コロナウイルスの拡大により、ワイナリーや酒販店の休業、観光客の減少など、多くのビジネスに影響が出ていると付け加えた。
パンデミック後は、ホテルやレストラン、居酒屋、スーパー、コンビニエンスストアなどでワインの販売が活発化すると予想されている。
日本では、都市部ではレストランや居酒屋で、郊外では自宅でワインを飲む人が多い。
日本産ワインのプロモーション
日本のワイン市場の将来性については、さまざまな課題があるものの、企業は明るい見通しを持っている。
Château Mercianは、各地のワイナリーと協力して、イベントを通じて日本ワインのプロモーションを行うほか、国内だけでなく海外にも日本ワインの情報を発信していく予定。
メルシャン株式会社の長野県にあるシャトー・メルシャン・椀子ワイナリーは、William Reed Business Mediaが主催する今年の「ワールド・ベスト・ヴィンヤード」で33位にランクインした。
同ワイナリーの参加は2年目で、日本のワイナリーとしては唯一トップ50にランクインしている。