牛乳摂取量の増加は、日本人女性の脳卒中リスクを低下させる可能性があるが、男性にはない-前向きコホート研究

_1.jpg

週に7〜12杯の牛乳を飲む女性は、週に2杯以下の人に比べて、虚血性脳卒中のリスクが有意に低いことが、日本の新しい研究で明らかになった。

この関連性は男性には見られなかった。本研究では、日本人の健康な中年層を対象に、牛乳の摂取量と脳卒中発症との関連性を評価した。

日本の牛乳消費量は欧米諸国に比べて低い。2016年の日本の「国民健康・栄養調査」によると、牛乳・乳製品の平均摂取量は成人で111.2g/日であった。オランダでは、成人と高齢者の平均乳製品摂取量は321g~374g/日。

牛乳と脳卒中リスクに関するこれまでの研究は、日本では一貫性がなく、ほとんどが脳卒中による死亡率を評価したものだった。

研究者らは、「我々の知る限りでは、牛乳の摂取頻度と脳卒中の発症率との関連を調べた日本初の前向きコホート研究である」とNutrients誌に記している。

データ収集

東日本に住む40歳から69歳までの17,000人以上を対象とした岩手県北コホート研究のデータをもとに、本研究では対象を約14,000人に絞り込んだ。

対象者は健常者のみとし、脳卒中やCVDの既往歴のある方は除外した。

この研究は2002年に開始され、参加者は約10年間追跡調査された。

簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いて牛乳の摂取頻度に関するデータを収集し、被験者を2カップ/週未満、2~7カップ/週未満、7~12カップ/週未満、12カップ/週以上の4つのグループに分けた。

脳卒中の結果

追跡調査期間中、478例の脳卒中が確認された。脳卒中のアウトカムは、全脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中であった。

その結果、2~7カップ/週および7~12カップ/週の頻度で牛乳を摂取する女性は、2カップ/週未満の女性に比べて、全脳卒中および虚血性脳卒中のリスクが有意に低いことが示された。

出血性脳卒中については、牛乳摂取頻度との有意な関連は認められなかった。

男性では、牛乳の摂取頻度と脳卒中リスクとの間に有意な関連は認められなかった。

男女間の違いの要因としては、「高血圧、糖尿病、多量の飲酒、喫煙習慣などのCVD危険因子を持つ男性の割合が、女性に比べて高いことが考えられる」と研究者らは述べている。

「これらの要因は,牛乳摂取量よりも脳卒中発症に強い影響を与えており,牛乳摂取頻度と脳卒中発症との関連性が隠されていた可能性がある。

「今回の結果から,女性では適度な牛乳摂取(7~12カップ/週)が虚血性脳卒中のリスクを低下させることが示唆されたが,男性ではそうではなかった。日本人の虚血性脳卒中の予防には、1日に約1~2カップの牛乳を摂取することが有効である可能性がある。

制限

今回の研究では、牛乳の摂取量が多いほど脳卒中のリスクが低くなるというメカニズムについては明らかにされていない。

しかし、研究者たらは、牛乳に含まれるカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのさまざまなミネラルが血圧を下げる効果があることが原因ではないかと考えている。

「牛乳に含まれるタンパク質やペプチドには、降圧作用やインスリン分泌抑制作用があることも示唆されています。」

この研究は日本で行われたものであるため、この結果を他の地域、特に牛乳の消費量が多い欧米の人々にあてはめる事は出来ない。

「しかし、今回の結果は、牛乳摂取量が少なく、塩分摂取量が多く、肥満度が比較的低いなど、日本人と幾つかの共通点がある東アジアの人々にも一般化できるのではないかと考えています」と述べている。

 

出典:Nutrients

https://doi.org/10.3390/nu13113781

「日本の地域住民における牛乳摂取量と脳卒中発症との関連:岩手県北地域コホート研究」

著者:Kozo Tanno,ら