日本の核監視:ほとんどの食品で放射能濃度が5年以内に低下したことを確認

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2011年の福島原発事故後に行われた日本の食品モニタリングでは、飲料水、牛乳、乳児用食品は政府が定めた放射能濃度の基準値内に収まっていたが、野生動物の肉や農産物のカテゴリーの一部のサンプルでは依然として高い放射能が検出された。

2011年3月に起きた福島第一原子力発電所の事故により、放射性核種が環境中に放出された。

2012年、政府は食品中の放射性核種、特に放射性セシウムの基準値を設定した。

基準値は、飲料水10 Bq/kg、牛乳及び乳児用食品50 Bq/kg、野生動物の肉、水産及び農産物を含む一般食品100 Bq/kgとなった。

この基準値に基づいて、17都道府県の自治体が独自にモニタリングテストを行い、基準値を超えた食品が流通しないように、回収・廃棄を行っている。

本研究では研究者らが、モニタリング結果を用いて放射性セシウムを含む食品の摂取に起因する内部被ばく線量を推定し、事故後に実施された食品規制措置が放射性核種に対する食品の安全性を確保する上で有益であるかどうかを検討した。

この結果は、Foods誌に掲載された。

データ収集

本研究では、研究者らは厚生労働省 (MHLW) ウェブサイトからダウンロードした毎月のモニタリング結果を分析した。

2012年度 (規制開始年) 及び2016年度 (事故発生5年後) のデータを評価した。

食品は食品区分(飲料水、乳・幼児食品、農産物、畜産物、水産物、野生動物の肉その他の食品)に大別され、セシウムの放射能濃度 (Bq/kg) が測定された。

セシウムの放射能濃度はセシウム134 (Cs-134) とセシウム137 (Cs-137) の合計とした。

推定被曝線量は食品摂取量、各食品中の放射能濃度及び線量係数の積として計算した。

その後、推定された被ばく線量を用いてモニタリング結果と比較し、実施された食品規制の効果を検証した。

2012年度のモニタリング結果

2012年度のモニタリング結果では、放射能濃度が最も低い区分は飲料水と乳・乳児用食品であった。1688の飲料水試料のうち、70.9%が放射能を検出せず、28.3%が0~10 Bq/kgであった。13サンプルが10 Bq/kgの基準値を超えた。

5258のミルク/乳児用食品サンプルのうち、96.1%が放射能を検出せず、3.9%が0から10 Bq/kgを検出した。いずれのサンプルも50 Bq/kgの基準値を超えなかった。

放射能濃度が最も高かったのは、野生農産物と野生鳥獣肉類であった。

基準値が100 Bq/kgに設定された野生農産物では, 50,367試料中662試料が基準値を超えた。

野生鳥獣肉類については、1375サンプル中519サンプルが基準値を超え、2サンプルが5万から10万 Bq/kgを含んでいたことがわかった。

2016年度のモニタリング結果

事故から5年後の2016年度には、基準値を超えた検体は大幅に減少し、飲料水及び乳・乳児用食品の基準値を超えた検体はなかった。

「これは、半減期、風化効果による放射性核種の減衰と、飼料管理、土壌や木材の除染、カリウム肥料などの食品中の放射性核種を低減するための対策に起因する」と研究者らは記している。

​しかし、 野生鳥獣肉類 (イノシシ、クマ、シカ、鳥類) および野生農産物 (山菜類等およびキノコ) カテゴリーからのいくつかのサンプルは、依然として高い放射能を示した。

例えば、25,603の野生農産物サンプルのうち70サンプルが100 Bq/kgの基準を超えた。

野生鳥獣肉類については、1519サンプル中219サンプルが基準を超え、2サンプルは1万から5万 Bq/kgを含んでいた。

「これらの区分に係る飼養・栽培管理が困難であることから、数年経過しても高濃度の放射能を含んでいたと考えられる。」

放射線量

また、研究者は2012年度の推定被曝量を0.0430mSv/yと算出した。

コーデックス委員会で採用している基準値は1mSv/yである。

したがって、原発事故後に日本で実施された食品規制の施策は、放射性物質に対する食品の安全性を確保する上で有益であったと考えられる。

研究者らは、モニタリング検査は食品の安全性を測る良い指標であり、今後もこのようなテストの効果を調査していくと述べている。

 

出典:Foods

https://doi.org/10.3390/foods10040691

「モニタリング結果を用いた食品中放射性核種の現行基準に基づく食品規制による内部被ばくに対する線量低減効果の推定」

著者:Minoru Osanai,ら