コアレンジとクラフト重視:キリンビールは発泡酒や新ジャンルビールの成長機会は少ないと見ている

_1.jpg

キリンビールは、コロナウイルスや最近の酒税改正を受けて、低麦芽発泡酒部門や新ジャンルの見通しはそれほど前向きではないことから、主力のビールブランドと缶クラフトビール事業に注力する

同社の昨年の売上高は、ビール:18.6%減、発泡酒(麦芽25%未満):2.1%減、ウイスキー、スピリッツ、酒類:10.8%減と各カテゴリーで減少した。

しかし、いわゆる「新ジャンル」と呼ばれる第三のビール(ノンモルトビール)、RTD(缶カクテル)、ノンアルコール飲料はそれぞれ4.6%、12.3%、10.4%の増加となった。

キリンビールは、2021年の売上目標をビール(+17.2%)、RTD(+4.9%)、ノンアルコール飲料(+23.2%)と前向きに設定している。

一方、発泡酒、新ジャンル、ウイスキー、スピリッツ、酒類ではそれぞれ-6.4%、-3.6%、-6.8%のアンダーパフォームを予想している。

コロナウイルスの影響とクラフトビール

国内のビール市場全体が減少傾向にある中、キリンはクラフトビール製品の売上が2020年は2019年に比べて30%増加していると述べているが、これは感染拡大により家庭での消費が増加しているためだと同社は見ている。

「家庭向けクラフトビール の市場拡大の可能性は大きいとみています」とキリンホールディングス広報担当の髙島 与佳さんは語る。

キリンでは、今年の売上目標を達成するために、ビールカテゴリーの訴求力向上に取り組んでいるが、その一つがビールサーバーである。

ホームタップは、バーやレストランでビールを味わうように、絹のようなクリーミーな泡を注ぐことができる家庭用クラフトビールサーバー。

「コロナウイルスにより自宅で過ごす時間が増えたことで、より充実した自宅での過ごし方を求める消費者ニーズがあり、付加価値の高いビールのニーズを産み出しました。」

キリンのクラフトビールブランドには、「グランドキリン IPA」「グランドキリン WHITE ALE」「ブルックリンラガー」などがあり、ホームタップサービスに対応している。

酒税法改正

日本では2020年10月から、レギュラービール(麦芽50%以上)の減税、発泡酒や新ジャンル飲料の増税など、ビール全般にわたる税制改正の第一段階が開始された。

2026年10月までに3つのカテゴリーで酒税を統一することを目指している。

今回の改定で、缶ビールを中心にビールへの関心が高まりそうだ。2020年では、一番搾り(缶)が前年比10%増となった。

同社では、この傾向は2021年も続くと予想している。

発泡酒は、消費税増税による減収が見込まれるものの、キリンは健康志向の高まりから、「キリン 淡麗グリーンラベル」や「キリン 淡麗プラチナダブル」などの糖質ゼロや低糖質商品の市場予測を上回る売上に期待を寄せている。

昨年のキリン淡麗グリーンラベルの売上は、何とかプラス2%にこぎつけた。

キリンは市場予想を上回る業績を期待しているが、新ジャンルのカテゴリーも同様に、増税の影響で打撃を受けることが予想される。

新ジャンルブランドの一つである「本麒麟」は、税制改正やコロナウイルスにもかかわらず、2020年には約3割の売上増を記録した。本麒麟は、ビールの味や飲み心地を持つしたノンモルトビール。

高島さんによると、キリンビールの今年の計画は「一番搾り」や「本麒麟」などの主力ブランドの強化で、「弱いブランドは2026年の段階的な酒税改正で淘汰されるでしょう。」