客観的創造性:アサヒ「AIクリエーターシステム」でパーソナライゼーションよりもパッケージのオリジナリティを追求

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飲料大手アサヒは、AIを活用したデザイン技術を用いて、一般的な業界の流れである「個性的なデザインを作る」のではなく、「客観性」と「オリジナリティ」を重視した商品パッケージのデザインに取り組んでいる。

この技術は「AIクリエーターシステム」と名付けられ、アサヒグループがテックディベロッパーであるCogent Labsと共同開発した。

「アサヒが所有するAIクリエーターシステムに現在、グラフィックやパッケージサンプルをインストールし、パッケージデザインをさらに学習できるようにしています」とアサヒPRマネージャーのKristin Chiu氏はFoodNavigator-Asia誌に語った。

「パッケージデザインを客観的に創造し、よりクリエイティブなものにするために、個人の好みにとらわれないシステムを構築しました。好みや経験、固定観念などの個人的な要素を排除するシステムであるべきだと考えています。」

​AIクリエーターシステムを発表した同社の最初のリリースでは、 「前例のない独創的なパッケージデザイン」を作ることができることと、これを行うために人間の理想の領域を超えることにも重点が置かれた。

「このシステムはAIディープ ラーニング技術を利用して、優れたデザインに共通すると思われる特徴を独自に抽出し、これを利用して人間が容易に概念化できないアイデアを生み出します」と同社。

「食品・飲料の購買は、商品の内容だけでなく『見た目』にも左右されることがあります。そこで、魅力的なパッケージを作ることで、消費者の購買意欲を刺激し、市場を活性化させることができると考え、AIを活用したシステムを開発しました。」

同社は、このような独自性や独創性を活かして、AIが作り出したデザインで、商品が店頭で際立つようになることを期待している。

AIクリエーターシステムは2020年3月に初めて導入され、アサヒは2020年4月から実験を行ってきた。

その後、2020年8~9月には「AIクリエーターシステム」とリンクするVR(バーチャルリアリティ)システムを起動させ、製品の試作品を仮想3D化して製品開発を効率化しようとしている。

「VRシステムは、実体験を産み出すため、3Dモデル生成と『仮想商品棚生成』を組み合わせたもので、VRゴーグルを装着すると、まるで冷蔵ショーケースの前に立って商品を見ているかのような臨場感が得られ、消費者の目線がダイレクトに伝わってきます。」

Chiu氏によると、これらはまだ試験段階であり、市場に出回っているアサヒ製品のパッケージにはまだ適用されていないが、時間の問題だという。

食品廃棄物削減のためのAI

アサヒは、パッケージデザインだけでなく、この技術を生産計画に導入することで、生産過程で発生する食品廃棄をAIで削減することも視野に入れている。

AIを使って、実際の生産の約2週間前に生産計画の調整を推奨するシステムで、過去の業務文書や在庫実績、出荷数量など、アサヒの膨大なシステムデータを元に構築された独自のコーパス(データバンクのようなもの)をAIに学習させる。

基本的にAIが行うことは、カルピスやWONDAの生産予定数が記載された生産計画の草案を作成、コーパスからのデータと照合した後に推奨を行うことである - 例えば、カルピスの生産量を減らし、WONDAの生産量を増やすことを推奨するようなことになる。

とはいえ、最終的な意思決定は人間の手に委ねられることに変わりはなく、当面はAIだけに頼って生産の意思決定をすることはないであろう。