韓国の日本製品に対するボイコットは、現在進行中の日韓貿易紛争に呼応して1年以上前に始まったが、ほとんど緩和されておらず、食品・飲料業界では特に日本のビール会社にシワ寄せが来ている。
アサヒグループホールディングスのクリスティン・チュウ コミュニケーション マネージャーはFoodNavigator-Asia誌に「韓国ではボイコットが続いており、状況は全く良くなっていない」と語った。
「韓国でのビール販売は今年も厳しい状況で、コロナウイルスの影響もありますが、ボイコットやウイルスの影響を検証するのはまだ難しい状況です。基本的にすべての販売チャネルが影響を受けています。」
ユーロモニターのデータによると、アサヒのこれまでの輸入ビールトップの座は、中国のビール 青島 (チンタオ) に奪われ、次いでハイネケンが2位となった。
別のビール大手、キリンでも同様の状況である。
「販売パートナーであるHITE JINRO(株)との守秘義務契約があり、具体的な販売数量への影響は明かせませんが、韓国でのボイコットの影響は受けています」とキリンホールディングス コーポレートコミュニケーション部 広報担当の高島 与佳さんは語っている。
「一般的な市場環境を踏まえて、 たとえコロナウイルスが他の企業のオンラインセールスを後押しするのに役立ったとしても、私たちの状況が良くなったとは思っていません。」
また、HITE JINROは2020年10月現在、ホームページからキリンビールについての言及をすべて削除している。
大規模な影響
日本の財務省のデータによると、ボイコット開始前、韓国はビール輸出全出荷額の約60%を占め、金額では約8億円(756万米ドル)と日本のビール輸出先のトップであったことから、今回の影響の大きさは特筆すべきものがある。
昨年10月には、2カ月連続で前年同月比9割以上の落ち込みを記録し、ビールの輸出総額はゼロになった。
2020年8月現在、政府統計サイト「財務省貿易統計」によると、韓国向けの出荷量は33万リットル(3,150万円/US$297,000)を超えており、ボイコット前の水準(2018年8月だけで650万リットル、輸出額6億4,300万円/US$607万)に比べれば微々たるものだが、一部の企業にとっては少し先を見通すには十分だという。
「オンプレミス(バーやレストランなど)、オフプレミス(小売)ともに緩やかに回復している」と高島さん。
一方、アサヒはより慎重で楽観的ではないようだ。現在中止されているマーケティング活動を復活させるには、事態がより安定するまで待つとしている。
「アサヒは状況を注意深く見て、状況が緩和されれば売上とシェアを取り戻せるように努力する」 とチュウさんは語っている。
日韓の複雑な紛争は昨年、韓国最高裁の韓国人労働者への戦時補償の決定、戦時中の「慰安婦」に対する日本の謝罪と補償のさらなる要求、そして日本が韓国のハイテクチップ製造用の主要材料の輸出規制を強化したことによる報復措置など、無数の要因を巡って火がついた。
今回の紛争は、1965年の国交樹立以来、日韓関係の最下位に位置すると広くみられている。