議論は、第2回FoodNavigator-Asia Unlocking Innovation Online Seriesウェビナーで、 「新製品開発と進化する消費者の展望」 というテーマで行われた。(オンデマンドで聴く)
5名のパネルは、Ch. Hansenの乳製品衛生担当シニアディレクター Lars Bredmose氏、Ingredion APACの成長プラットフォーム担当シニアディレクター Eric Weisser氏、味の素のアソシエイトジェネラルマネージャー Dr. Ana San Gabriel氏、JD.comのコンサルタントで元国際企業責任者 Brad Burgess氏、Heineken APACのマーケティングトランスフォーメーションディレクター Sarah Maddock氏。
FoodNavigator-Asia誌の編集長Gary Scattergoodがホストを務めた。
パネルは、パンデミックが業界に与えた影響は、供給の変化と消費者動向の観点からも、これまでにないものであると指摘した。
Maddock氏は、消費者の行動がeコマースや新しい消費パターンにシフトしていることを挙げ、ブランドは機敏かつ迅速に、これらの変化に対応する必要があると指摘した。
例えば中国では、JD.comのようなeコマースプラットフォームでは、野菜などの生鮮食品のほか、サプリメントやマヌカハニーなどの健康食品が大きくピックアップされているとBurgess氏は述べた。
消費行動の面では、Maddock氏は人々にはまだ社会的交流に対する基本的なニーズがあるとみており、ブランドは製品のマーケティングにおいて創造的である必要があることを示唆した。
バーやレストランを主な販路とするハイネケンのような酒造メーカーにとっては、世界各国の様々なロックダウン措置の間、売上が低迷した。
「ここ数ヶ月の間に、人々が(外食産業以外の)アルコールを消費する新たな機会を作っているのを目にしており、人々がより慎重になり、ソーシャルディスタンスを保つための措置を遵守し続けているため、この傾向は続くと予想されます。」
原材料メーカーとして、Bredmose、Weisserの両氏は、刺激を受け続けることと敏捷性を持つことが食品新製品開発にとっても重要であることに同意した。
Weisser氏は、メーカーやブランドの製品開発を迅速に支援するために、各地域の市場にチームを置くことは、特に規制当局の承認に関して有利だという。
同氏はまた、製品を素早く棚に並べ、消費者からのフィードバックを受け、それに応じて改善していくための機敏さとスピードを持った体制に属さなで小規模なブランドが増えていることを指摘している。一部の大手ブランドは対応があまりにも遅く、取り残される可能性があるという。
健康と信頼
また、パンデミック期間中のフードトレンドの変化についても議論が行われた。
Bredmose氏は、「人々は現在、免疫力を高める必要性の高まりを背景に、保存料を含まない安全な食品やより健康的な食品を求めている」と述べ、プロバイオティクスなどの免疫関連製品が人気を集めていると付け加えた。
「この危機の間、消費者はより多くの免疫力を高める製品を求めていることがわかりました。例えば、プロバイオティクスは、腸内感染を防ぐために、微生物相を調節することで免疫システムを改善することができます。また、私たちの免疫システムの70%は腸にあり、プロバイオティクスは腸の免疫細胞の活動を調節することができます。」
Weisser氏は、コンブチャやヨーグルトなどの発酵製品には、ウイルスと戦うための天然の免疫力を高める特性があり、企業がこれを利用する機会が増えていると指摘している。
「また、健康と安全の両方の理由から肉類の摂取量を減らす場合の植物性食品、タンパク質と繊維質を多く含む食品、砂糖を減らした製品などに成長傾向が見られます。」
安全性の観点から、パネリスト達は消費者が、自分が何を食べるかについてもっと意識していることに同意した。
Maddock氏は「消費者はすでにより良い飲食によって自分の健康を意識し、危機の観点からは製品、ブランド、および産地への信頼についてより意識するようになった」と発言した。
Burgess氏は、「中国では、調味料や添加物のない食品を求める傾向が高まっている」と付け加えた。
健康的な可能性
味の素とハイネケンでは、こうした消費者の健康志向が製品や進行中の新製品開発に反映されている。
Maddock氏は、より健康的な飲み物に対する消費者の需要を満たすために、わずか69カロリーのハイネケン ゼロアルコールビールを例として挙げた。
「長年にわたり、私たちは味の多様化傾向を目の当たりにしてきました。伝統的にビールの味の選択肢は狭く限られており、熟年の消費者にしかアピールできませんでしたが、今では消費者が試してみたいと考えていることがわかります。例えば、ライトテイストのビールはミレニアル世代やY世代に好まれています。」
味の素は、アミノ酸で有名な企業であるが、その専門知識を活かして、より革新的で健康的な製品を産み出している。
「私たちは、食品素材の会社から、栄養と健康を大切にする組織への転換を図りたかったのです。」
「アミノ酸の伝統的な機能である風味向上だけでなく、減塩能力などの新しい機能にも注目しています。これは消費者が食卓塩の消費量をさらに減らすのに役立つ可能性があります」とGabriel氏は説明した。
「また、アミノ酸は認知症などの世界的な健康問題の解決にも役立つことが解り、研究を進めています。」
味の素は、オーストラリアのヘルススター評価に基づいた栄養プロファイリングシステムにも取り組んでいる。「野菜や果物、たんぱく質を多く摂取し、糖分や塩分などのマイナス成分の摂取を減らすようにしています。」
同社は現在、このシステムを利用した既存商品の評価を行い、より健康的な食品の開発に取り組んでいる。