国際的同等:原発事故から9年後の日本のボトルウォーターの放射線量を評価

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2011年の福島原発事故後に人気が急上昇した日本のボトルウォーターの放射線レベルは、世界のレベルとほぼ同じであることが判明した。

日本ミネラルウォーター協会によると、ボトルウォーターの消費量は2010年の一人当たり19.7L/年から2019年には31.7L/年に増加している。

食物に含まれる238U, 232Th, 40Kなどの自然起源の放射性核種に起因する放射性物質を、人々は平均してボトルウォーターから0.3 m0Sv/y(年シーベルト)摂取している。飲料水から受ける量は約0.01 mSv/y。

また、地下の天然ミネラル水源に由来するボトルウォーターも、原発事故とは関係のない自然の放射性物質に曝される可能性がある。

この研究では、日本とアイルランドの研究者が、日本の市販のボトルウォーター 20サンプルの放射線量を13種類の天然および人工の放射性核種を分析・評価を実施した。

「ボトルウォーターに含まれる天然放射性核種の摂取に起因する活性濃度や摂取線量を推定するために、他国でも同様の研究が行われているが、日本のボトルウォーターを包括的な放射性核種群で分析しようとした研究は一つもない」と報告している。

日本のボトルウォーターの放射性核種の濃度を比較したところ、世界各国の研究結果と比較しても遜色ない結果が得られたと研究者らは述べている。

この研究は、International Journal of Environmental Research and Public Health誌に掲載された。

研究デザイン

本研究では、日本のスーパーで購入した20種類の日本製ボトルウォーターについて、234U、235U、238U、226Ra、228Ra、222Rn、210Po、210Pb、40K、3H、14C、134Cs、137Csの活性濃度を測定した。

放射性核種の多くは、大気や宇宙線、地上の放射能などから自然に発生するものだが、研究には3H, 14C, 134Cs, 137Csなどの人工的な放射性核種も含めた。

研究者らは、特に福島第一原子力発電所事故後、放射線リスクコミュニケーションの観点から人工放射性核種を含めることが重要であると説明している。

すべての水サンプルは、全国の天然ミネラルウォーターの水源に由来しており、その地域の基礎となる地質の変動の潜在的な影響を把握するために、地理的分布を広げた。

サンプルは、アイルランドの環境保護庁の放射線モニタリング研究所で放射能の分析を行った。

年間実効線量は、放射性核種の放射能濃度、年間水消費量31.7 L、各放射性核種の線量係数値からなる式を用いて推定した。

結果

研究者らの報告によれば、すべての試料について推定された平均年間実効線量は5.6μSv/y (0.0056ミリシーベルト/年)であった。

これは、放射線学的観点から人が消費しても安全であると考えられる水に対する世界保健機関 (WHO) が勧告したガイダンスレベルである0.1 mSv/yを下回っている。

推定線量に対する最も重要な寄与因子は228Raであったが、これは自然起源の放射性核種であり、安全上重要ではない。

アルジェリア、クロアチア、イタリア、ポーランド、オーストリア、ハンガリー、マレーシアの研究でも同様の結果が報告されており、経口摂取量の最大の寄与物質はラジウムであった。

研究者らによると、ボトルウォーター摂取による年間実効線量は、WHOが勧告した指針値を少なくとも1桁下回っており、日本のボトルウォーターに関して実施されるこの種の包括的な研究が行われたのは初めてである。

現在、日本には稼働可能な原子炉が33基あるが、実際に稼働しているのはそのうちの9基のみである。

出典:International Journal of Environmental Research and Public Health

https://doi.org/10.3390/ijerph17144992

「日本におけるペットボトル飲料水の消費に伴う放射線量の評価」

著者:Aoife Kinahan等