ビジョン2030:味の素、ヘルシーエイジングと減塩を促進するために焦点をシフト

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味の素株式会社は、今後10年間の新たな成長推進力として、世界的な健康問題と戦うためのフードソリューションに注力する。

2030年ビジョンの一環として、同社は「美味しく簡便な食」(2010年から2019年)から「食品と健康問題」(2020年から2029年)に焦点を移す。

2020年から2025年までの中期経営計画の一環としてこの戦略を発表した。

同社広報部門のシニアマネージャーであるDaisuke Nakamiya氏はNutraIngredients-Asia誌に、同社は過剰な塩分摂取と加齢に伴う機能低下という2つの世界的な健康問題に焦点を合わせている。「美味しく簡便な食」は順調に伸ばし、健康価値を提供する新しいコンセプトを追加すると語った。

2030年ビジョンのプレゼンテーションで、社長兼CEOのTakaaki Nishii氏は、「アミノ酸の力を解き放ち、世界中の人々がより健康な生活を送ることができるようにする」ことが使命であると説明した。

今後10年間、「美味しく簡便な食」に加えて、「スマートな食」とエコ/サステナビリティをさらに重視してゆく。

Nakamiya氏によると、「「美味しく簡便な食」と「スマートな食」の違いは、従来のスープや冷凍食品の味と利便性に加えて、ライフスタイルの変化を捉える製品やブランドを強化していることです。」

世界的な健康問題

Nishii氏は、世界の国々の95%で過剰な塩分摂取が一般的であり、高血圧などの慢性疾患のリスクを軽減する上で最も重要な問題の1つであると説明している。

WHOは2015年に、世界人口の20%が高血圧であり、全死因の13%または年間950万人の死亡の原因となっていると述べている。

第二に、加齢に伴う機能低下に関しては、急速に高齢化する世界において、不健康なライフスタイルと不十分な栄養バランスが深刻な健康問題を引き起こす。

「さらに、世界の高齢者の20%が栄養不足であり、筋力低下や認知力低下の原因となるタンパク質などの必須栄養が不足している。健康な長寿の観点での課題です」と述べている。

売上成長予測

過去20年間の味の素の利益成長は、主に動物栄養(2000年から2009年)および海外食品事業(2010年から2019年)によるものであった。

既存事業売上高の伸びは、2019年度に前年比2%増加した。 2030年の目標の一環として、同社はさまざまなフェーズにマイルストーンを割り当てている。 2022年度と2025年度については、それぞれ前年比4%増と5%増の計画となっている。

最終的な目標は、2030年に5%の成長を維持することである。

この目標の一環として、味の素は食品の単価を引き上げ、減塩やヘルシーエイジングなどの健康価値を促進する製品をさらに開発してゆく。

味の素は、減塩製品は通常品よりも単価が20%高く購入されていることを明らかにしている。

Nishii氏は「これは新興国を含めた成長トレンドであると確信しており、ここでも健康増進製品を強化し、単価を上げることで売上高成長につなげることができると考えています。」と語り、中核事業(調味料、冷凍食品、ヘルスケア)への投資を増やし、研究開発とマーケティングの80%をこれらの事業に配分すると述べた。

過剰塩分摂取と健康な長寿

アミノ酸の主な機能は、そのフレーバー特性と、身体機能の維持と改善を助けるなどの栄養的および生理学的機能であるとNishii氏は説明している。

Nakamiya氏によると、味の素にはいくつかの減塩製品があり、一部は減塩本だしなどナトリウムを減らしたもの、他はグルタミン酸ナトリウム(MSG)を使用してナトリウムを減らしたものがある。

味の素は、アミノ酸を活用して、塩分を減らすとともにおいしさ(うま味)を提供したいと考えている。

同社によれば、食卓塩のナトリウム含有量は39%であるのに対し、MSGは12%であるため、食品の風味付けには、はるかに少ないMSGで対応できる。これはMSG調味料からのナトリウム摂取の総量が食卓塩からのものよりもかなり少ないことになる。

味の素は、減塩と呈味機能のほかに、アミノ酸には身体機能の維持と改善に役立つ栄養的および生理学的特性があると付け加えている。

たとえば、ロイシンのような分岐鎖アミノ酸(BCAA)は筋肉の構築を助け、アスパラギンとグルタミン酸は認知機能の神経伝達物質として作用する。

同社には、加齢に伴う機能低下を防ぐために、タンパク質やサプリメントを加えたスープなどの既存製品がある。 コグニティブヘルスに加え、スープや機能性成分を含む飲料などの新しいビジネス分野へ進出する予定。

MSGのイメージ

西井社長は 「MSGのイメージは向上している」 と述べた。

「‘うま味で美味しい減塩’ と言うと、MSGへのマイナスイメージが気になるかと思いますが、今日では流れが変わりつつあることをお伝えします。」

続けて、「米国では、主要レストランのメニューや代替肉にMSGを使用する傾向が高まっている。国内では、‘味の素’ の家庭用販売が10年ぶりに前年を上回りました。」と語った。

‘味の素’ は同社の代表的なMSG製品であり、最も有名な調味料である。

持続性

また同社は、2030年までに、製造工程での水使用量を80%削減することを計画しており、小型包装材の削減と単一素材へのリサイクルにより、プラスチック廃棄物を「0」することを目指している。

さらにコーヒー豆、パーム油、紙、大豆、牛肉などの原材料の100%を持続可能な調達にすることを考えている。

COVID-19の影響

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)の発生で、味の素は、今後3カ月間のマイナス影響を予測している。

中国からの輸入原材料を代替した場合のコスト面の影響として、約3億円を見込む。

業務の中断については、上海味の素アミノ酸社および上海味の素調味料社において、最大6億円の損失が見込まれている。