本研究では、正常な腎機能を持つ合計12,126名が被験者となりました。被験者は2008年7月から2015年12月の間、年に1回の健康診断のために病院の診察に訪れました。
食塩摂取量は、24時間の尿中ナトリウム排泄量を見積もることで評価しました。
研究者は、これらの被験者の健康記録を長年にわたって調べた結果、尿中ナトリウム排泄量が高い人は腎障害を発症する可能性が高いことを発見しました。
例えば、高食塩摂取量(平均摂取量11.5g)群では、腎障害を発症するリスクが29%高く、これは低食塩摂取量(平均6.2g)群の約2倍でした。
さらに、食塩摂取量が1g増加するごとに、腎障害を発症するリスクが約4.5%ずつ増加しました。
現在、日本の厚生労働省によれば、男性で8g/日以下、女性で7g/日以下の食塩摂取量を推奨しています。
研究者はこの観察研究では、食塩摂取量と腎機能の間の根本的な仕組みを説明できないことを認めています。
しかし、腎臓はナトリウム排泄を担っており、研究者は過剰な食塩摂取が腎臓に負荷を掛け、容量過負荷となる可能性を考えています。
これは、糸球体高血圧(慢性の高血圧が腎臓組織に損傷を与える状態)を引き起こします。蛋白尿(尿中に異常な量のタンパク質が見られる状態)も発生することがあります。
「現在の研究の結果は、食事中の食塩摂取量が一般集団での腎臓機能障害と密接に関連しているという重要な概念を提案しています」と研究者は述べています。
「現在の研究結果によれば、ベースラインの食事中の食塩摂取量が低いほど、腎機能の予後が良いことを示しています」と研究者は結論付けています。
限界
研究者は本観察研究のいくつかの限界について述べています。
第一に、参加者は1年に1回の健康診断を受けており、尿サンプルは1年に1回のみの採取です。
第二に、24時間尿測定は食塩摂取量推定のための標準方法です。
しかし本研究では、大規模試験では24時間の方法は実際的ではないため、スポット尿検査のみを実施しています。
このため、本研究は、ナトリウム排泄量が比較的高い参加者のナトリウム排泄量を過小評価する可能性があります。
出典:Kidney and Blood Pressure Research
DOI: 10.1159/000492406
Dietary Salt Intake is a Significant Determinant of Impaired Kidney Function in the General Population
著者: Sugiura et al