作物種の中で、コメは 20 億人を超える人々の主な食料源であり、過去の研究結果によると、大気中の CO2 が予測どおり増加した場合、大半の植物種でイオノームのアンバランスが生じ、土壌ベースの栄養素に対して炭素が不均衡に増加する可能性があります。
このアンバランスは、結果としてタンパク質や微量栄養素などの人間の栄養に大きな影響をもたらす可能性があります。
このため、中国と日本の研究者たちは、現在アジアで広く栽培されているジャポニカやインディカ、交配種などの 18 の遺伝的多様性を持つイネ系統に対して多年および多地点の実験を実施しました。
その結果、予測される CO2 レベルの土壌条件で栽培された場合、すべての米品種で CO2 に対するタンパク質含有量が 10.3% 減少しました。
また、鉄と亜鉛もそれぞれ 8% および 5.1% と大幅な減少が確認されました。
「2013 年の時点で、主に東南アジア諸国(バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マダガスカル、ミャンマー、ベトナム)に住む約 6 億人の人々が、食事による一人分のエネルギーやタンパク質の 50% 以上をコメから直接摂取している」と、研究者たちは報告しています。
栄養価の損失
「ここに示すデータは、最も広く栽培されているイネ系統の多くに対して [CO2] が誘発する栄養価(タンパク質、ミネラル、ビタミン)の変化の評価を初めてまとめたものであり、これによると、主な食パラメーターを対象にすると、今世紀発生すると見込まれる [CO2] により、世界の人口の大部分が、栄養価の損失を被ることになる」
研究者は、コメに依存する人々が被るであろう栄養価の損失とそれに伴う健康被害を正確に予測することは難しいと前置きしつつ、次のように主張しています。「CO2 が誘発する栄養価の減少とそれに伴う栄養不足や栄養失調のリスクは食物連鎖全体(収穫から食物摂取まで)を超越し、特に国や地域内の最貧困層に影響すると見込まれる」
解決策に関して研究者は、従来の品種改良または遺伝子組み換えを通じた品種選定により、CO2 が増えても栄養価が優れたコメを提供できる可能性があると主張しています。
また研究者は、栄養価の強化をさらに評価する必要がある点と、今後この状況が広がっていく可能性が高いことを消費者に認識させる必要がある点にも言及しています。
原典: Ecology
“Carbon dioxide (CO2) levels this century will alter the protein, micronutrients, and vitamin content of rice grains with potential health consequences for the poorest rice-dependent countries”
著者: Chunwu Zhu, et al